こども発達支援教室アクア blog

神奈川県伊勢原市にある児童発達支援・放課後等デイサービス こども発達支援教室アクアのブログ

発達障害の分野における専門家 2

 発達障害の分野に限っても、臨床心理士が実際に取り扱える領域は更に細分化されているのが実情です。

 言語障害や言語療法のエビデンスを知らないまま、言葉の発達を促そうと手探りで介入していたり、言語発達の指導にABAという畑違いの技法を無理やり当てはめようとする人たちさえいます。ABA自体は理論的に確立された技法ですが、適用範囲は限られており、何にでも使おうとするのはきわめて乱暴です。

 

 また、乳幼児健診やそこでピックアップされたグレーゾーンの子たちが通う市町村主催の発達教室には臨床心理士以外に保健師や保育士がいますが、いずれにせよ発達の経過を縦断的に見てきた経験が少ない場合が多いです。その為、「とりあえず様子を見ましょう」としか言えなかったり、家庭での関わり方についてのアドバイスも一般的な子育て論の範囲でしか言えないことはよくあります。

 

 小学校のスクールカウンセラーであれば中学に進学後の様子が分からない。中学校のスクールカウンセラーなら高校進学や就労支援の制度や成人後の生活といったイメージを具体的に持てない。

 

 児童精神科のクリニックに勤めている臨床心理士であるにも関わらず、服薬が子どもの生活に与える影響のプラスとマイナスを把握できていないこともありました。学校や家庭での様子を知るのに保護者からの聞き取り情報だけに頼り、実際の生活場面を見た経験がほとんど無いからです。

 

 発達の経過や環境について具体的に知らず、目の前の状態だけから判断してアドバイスしている専門家は決して珍しいものではないのです。

 

 だから専門家は信用ならない、という結論を述べたい訳ではありません。どんな専門家であっても発達障害に対してワンストップで対応できる人や団体はまず存在しないということです。

 あちこちの専門家を渡り歩くドクターショッピングの弊害は色々なところで言われることですが、これぞと思う専門家に出会えたとしても、その限界については認識した上で必要な知恵や力を借りるという付き合い方がベターだと思うのです(ベストは存在しません)。

 

 とはいえ、何が必要なのかを正しく判断するにはそれなりの知識が無いと出来ないので、保護者は自分たちでも色々と調べて、自分の考えや価値観にフィットした耳に心地よい情報だけでなく、聞きたくない情報や腹の立つ情報も含めて学ぶことが求められます。ただでさえ余裕が無いのにと思われるでしょうが、現在の福祉制度はそうした当事者(・保護者)の主体性を前提に設計されているのです。

 

 日本社会で猛威を振るっている自己責任論っぽくて、個人的には疑問を感じるところもありますが、そのような現実を踏まえた上で、自分はどうしていきたいのか、子どもにとって本当に必要なことは何か、何を犠牲にしなくてはいけないのか、何を犠牲にしたくないのか、それらを取捨選択していかなくてはならないのです。